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令和6年10月15日、東京地方裁判所は美容師がレジから複数回にわたり500円硬貨計2000円を不法領得した行為について、「信頼関係の破壊」を理由に普通解雇が有効との判断を示しました。
被告(美容室経営者)は従業員の金銭管理に不信を持ち、レジ周辺に防犯カメラを設置。映像証拠により複数回の金銭窃取が立証された点が、解雇有効の決め手となりました。
原告は令和2年8月から勤務し、一部顧客からのチップを受け取る慣例があったものの、売上金とレジ現金に不整合が生じていました。防犯カメラ映像から、4回に分けて計2000円をレジから取り出していたことが認められています。
また、美容師は不正行為を認めておらず、被害弁償もなかったことも裁判所の判断材料となりました。
美容室や小売業など金銭の直接取り扱いが多い職場では、以下の対策を検討し、リスク管理と信頼関係の維持を図ることが重要です。
経営者が売上金の管理状況を客観的に把握できるよう、防犯カメラ設置は効果的な手段です。本判決でも、映像証拠が解雇の正当性を証明する決定的材料となっています。
金銭領得行為を含む不正行為に対する懲戒解雇のルールを就業規則に明示し、労働者に周知徹底することがリスク抑制につながります。明確なルールは、解雇事由の立証に際しても有利に働きます。
金銭出納に関する定期監査、売上金とレジの現金差異の早期発見を目的に、チェック体制を整備することが求められます。継続的な管理強化が従業員の抑止効果にもなります。
従業員に対して金銭取り扱いやコンプライアンスに関する定期研修を実施し、不正抑止や誠実義務の理解を促進します。
不正行為が疑われる場合には速やかに事実確認を取り、適切な証拠収集を行ったうえで、その結果に基づく懲戒処分を判断することが求められます。
防犯カメラ設置後に従業員の不正抑止につながり、売上金の未回収トラブルが大幅減少した美容室の事例があります。加えて、就業規則の見直しと教育強化により、労使間の信頼関係が向上。結果として解雇件数が減少し、職場の円滑な運営が実現しました。
自店舗の金銭管理体制の現状把握を行い、不正リスクのあるポイントを明確にします。
レジ周辺の防犯カメラ設置や金銭管理機器の導入に着手。映像・記録の保全体制も併せて構築しましょう。
懲戒規定やコンプライアンス規定を最新化し、労働者へ説明会実施。サインや配布物などで周知を完璧にします。
金銭取り扱いの重要性や職務上の誠実義務について定期的な社内研修を設けます。
定期的な売上金チェックや不正発見時の速やかな対応フローを運用に組み込みます。
本事案に見るように、美容師によるわずか2000円の売上金窃取でも、証拠が明確であれば解雇は有効と判断され、労使間の信頼関係破壊が判断基準の中心です。経営者は金銭を取り扱う現場の管理体制整備と不正行為の明確な処分規定を整えておく必要があります。
今後の店舗運営や人事管理においては、防犯カメラの設置や適切な就業規則の整備、そして何より労使双方の信頼構築を念頭に置いた管理強化を検討しましょう。