退職代行利用のデメリットと企業・従業員双方が取るべき対策

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目次

退職代行利用の現状と背景

2024年1月以降に社員が退職代行サービスを利用した企業は約7.2%に上り、特に上場企業の44.6%が退職代行業者から連絡を受けた経験があります。小売業など一部の業界では52.9%と高い割合が報告されており、業種によっても影響度合いに差があるのが実態です。

この背景には、退職の意思を直接伝える際にパワハラや嫌がらせを避けたいという従業員側の合理的な理由もある一方で、職場のコミュニケーション不足や人間関係の悪化、また人的資本管理上の問題が複雑に絡んでいます。

退職代行利用による具体的なデメリットとは

1. 業務への直接的影響

これらは単なる「手続き上の問題」にとどまらず、現場の業務効率や顧客サービスの質にも影響を及ぼしています。

2. 有給休暇消化や書類対応の遅れ

このような事務処理の遅滞は、利用者の退職後の生活設計にも負の影響をもたらしかねません。

3. 企業側の人的資本・信頼性の低下

人的資本管理の観点からは、急な引継ぎ不足や業務負荷の増大は企業の人的資本損失とみなされます。評価の高い企業ほど転職市場での魅力度が高くなるため、組織内の急な負担増は企業価値の低下にもつながります。

4. 企業と従業員間のコミュニケーション不足

エン転職(エン・ジャパン株式会社)の調査では、退職代行利用により「本人と直接コミュニケーションが取れず、問題点が見えず職場改善につながらない」という現場の声が多く報告されています。また、退職者の荷物が会社に残り続けるなど、人的・物的な後処理にも負荷がかかっている実態があります。

5. 求人・採用面での影響

企業の一部には「退職代行を利用した人は採用しない」との判断もあり、将来的なキャリア形成にマイナスとなるケースもあります。

退職代行のデメリットを踏まえた具体的な解決策

企業・従業員双方の視点で施策を検討することが必要です。

1. 退職時のコミュニケーション環境の改善

2. 明確な引き継ぎルールとサポート体制の整備

3. 有給休暇取得の透明化と公正な扱い

4. 退職後の書類や物品返却の円滑化

5. 退職代行利用者への理解と適切な対応

成功事例:企業が退職代行問題に取り組んだケース

エン転職調査でも報告されたある企業では、退職代行により荷物の返却や書類対応が滞った経験を踏まえ、以下の対策を講じています。

これにより、業務混乱を最小化し、現場の負荷軽減に成功しました。

退職代行関連業務の実装ステップ

  1. 社内現状の調査と課題抽出
    退職代行利用の頻度や影響度をデータ化し、課題を整理。
  2. ルール・マニュアルの策定
    退職プロセスや引き継ぎ手順の標準化と、利用者への対応ガイドライン作成。
  3. コミュニケーション施策の強化
    相談窓口や面談体制の充実を図り、従業員の声を拾いやすく。
  4. 引き継ぎサポート体制の確立
    担当者の負荷軽減策を講じつつ、引き継ぎ漏れを防止。
  5. フォローアップと改善
    定期的に運用状況を見直し、現場や退職者の声を反映してブラッシュアップ。

まとめ:円滑な退職と職場環境の両立が求められる時代

退職代行サービスの利用には確かに便利さがあるものの、企業と従業員双方に多くのデメリットや問題点をもたらすことも事実です。引継ぎ不足による業務負荷やサービス低下、人的資本の損失、そして職場改善の機会損失など、長期的な視点での影響は軽視できません。

そのため、コミュニケーションの改善、引き継ぎ体制の強化、有給休暇や書類対応の公正な管理といった施策を着実に実践し、退職代行利用の増加に対応できる環境づくりを推進することが重要です。企業はこうした対策を通じて信頼性と組織力を高め、従業員も職業人生を円滑に進められるよう備えていきましょう。

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