それ、詐欺かもしれません。結婚をチラつかせお金を要求する危険な手口と見抜き方

「将来、一緒になろう」
その言葉が、どれほど心を温め、未来を明るく照らしてくれることでしょう。愛する人との結婚は、多くの人が夢見る幸せな舞台の幕開けです。しかし、もしその舞台が、あなただけを観客にした、巧妙な一人芝居だったとしたら…?

近年、「結婚」という信頼を逆手に取り、巧みにお金をだまし取る悪質な結婚詐欺の手口が増加しています。幸せの絶頂から、ある日突然、多額の借金と深い心の傷だけが残る。そんな悲劇の主人公にならないために、この記事を「脚本のネタバレ」として読んでください。

これは、甘い言葉の裏に隠された危険なシナリオを見抜き、あなた自身の力で悲劇の幕を引くための物語です。

結婚詐欺という名の「劇場」で演じられる典型的な脚本

結婚詐欺を働く役者(詐欺師)は、練り上げられた脚本に沿って巧みにあなたを信用させます。その多くは、偶然を装った出会いから始まり、感情が最高潮に達したときにお金の要求という本性を現します。典型的な3幕構成のシナリオを見ていきましょう。

第1幕:運命の出会いと急速な関係深化

役者は、マッチングアプリやSNS、結婚相談所など、出会いを求める人が集まる場所でターゲットを探します。そして、あなたの理想に合わせた人物像(例:高収入な職業、誠実な性格)を完璧に演じ、偶然を装って近づいてきます。

彼らは甘い言葉を多用し、毎日のように連絡を取り、あなたの孤独や承認欲求を満たしながら、急速に関係を深めていきます。あなたが「運命の人かもしれない」と信じ始めた頃、彼は次の幕へと物語を進めるのです。

第2幕:突然のトラブルと「二人で乗り越える」という罠

関係が安定し、あなたが彼を深く信頼したタイミングで、役者は「突然のトラブル」という見せ場を演出します。これは、あなたから金銭を引き出すための重要な伏線です。

政府広報オンラインの注意喚起でも、様々な口実が紹介されていますが、代表的なセリフには以下のようなものがあります。

ポイントは、必ず「あなたとの結婚のため」という目的を絡めてくることです。「二人でこの困難を乗り越えれば、幸せな未来が待っている」と信じ込ませ、あなたがお金を出すことを「愛の証」であるかのように錯覚させるのです。

第3幕:繰り返される言い訳と巧妙な引き延ばし

一度お金を渡してしまうと、役者はさらに要求をエスカレートさせます。「追加で費用が必要になった」「返済のために別の投資をしたい」など、様々な理由をつけて、あなたから搾り取ろうとします。

返済を求めると、「今手続き中だ」「もう少し待ってほしい」と何かと理由をつけて引き延ばし、次第に連絡が取りにくくなります。そしてある日突然、役者は舞台から姿を消し、あなたは観客席に一人、取り残されることになるのです。

脚本の矛盾を見抜け!詐欺師の嘘を見破る10のチェックリスト

その恋愛劇が、本物か偽物か。冷静な観客の視点に立てば、脚本の矛盾や不自然な演出に気づけるはずです。以下のチェックリストに一つでも当てはまる点があれば、危険なサインです。

これらのサインは、役者が舞台裏を隠すための必死の演技です。感情に流されず、客観的な事実を見つめる勇気を持ちましょう。

これは犯罪?「結婚詐欺」が法的に成立する条件とは

「お金を貸したけど、返してくれない」という男女間の金銭トラブルは、単なる民事上の問題と見なされることも少なくありません。しかし、結婚詐欺の手口が悪質なのは、それが刑法上の「詐欺罪」に該当しうる点です。

詐欺罪(刑法第二百四十六条)が成立するためには、「最初から騙す意図があったか」が最大のポイントになります。

具体的には、

という一連の流れが証明できる必要があります。「返すつもりだったが、結果的に返せなくなった」のではなく、「最初から返すつもりがなく、結婚を口実にお金をだまし取ること」が目的だった場合に、詐欺罪が成立するのです。

もし相手が既婚者であることを隠して交際し、金銭を要求していた場合、結婚の約束自体が嘘であるため、詐欺罪が成立する可能性はさらに高まります。

悲劇の観客で終わらないために。今すぐできること

もし、この記事を読んで「自分のことかもしれない」と心がざわついたなら、どうか一人で抱え込まないでください。悲劇の幕を自分の手で引くために、今すぐできることがあります。

1. これ以上、お金を渡さない(冷静な断り方)

相手から再びお金を要求されたら、たとえ関係が悪化することを恐れても、きっぱりと断る勇気が必要です。
「これ以上は、私の一存では決められない。親(や兄弟)に相談しないと、大きなお金は動かせないんだ」
「お金の専門家であるファイナンシャルプランナーに相談してみる」
このように、第三者の存在を匂わせることで、相手がそれ以上の要求を躊躇する可能性があります。

2. すべての記録を「証拠」として保全する

役者が舞台から消えた後、その存在を証明するのは残された「小道具」だけです。

これらは、法的な手続きに進む際に、何よりも雄弁な証拠となります。

3. 信頼できる「演出家」に相談する

この劇の筋書きがおかしいと感じたら、客観的な視点を持つ専門家に相談しましょう。彼らは、あなたが次に取るべき行動を的確に指示してくれる、言わば「総監督」です。

  • 警察相談専用電話「#9110」: 犯罪の可能性がある場合に、どこに相談すればよいかをアドバイスしてくれます。
  • 国民生活センター・消費生活センター「188」: 契約トラブルや詐欺的な商法に関する相談ができます。
  • 法テラス(日本司法支援センター): 経済的な余裕がない場合でも、無料の法律相談や弁護士費用の立替え制度を利用できます。信頼できる弁護士を探す手助けにもなります。

愛する人を信じたいという気持ちは、決して間違いではありません。その優しさや信頼を悪用する人間が、100%悪いのです。
どうか自分を責めないでください。

この悲しい劇のチケットは、もう破り捨ててしまいましょう。あなたは悲劇の観客ではなく、あなた自身の人生という、新しい舞台の主役なのですから。