求人票の「月給36万円」は嘘?労働条件通知書がもらえない時の緊急アクションガイド
「月給36万円、完全週休2日、残業ほぼなし」── 魅力的な求人票を信じて入社した。しかし、初任給の明細を見て愕然。「基本給25万円+固定残業代11万円」と書かれており、話が違うじゃないか…。
こんな悪夢のような事態からあなたを守る、たった一枚の、しかし最強の武器。それが『労働条件通知書』です。しかし、もし、その労働条件通知書がもらえないとしたら…?それは、あなたのキャリアの旅が、搭乗券なしで始まってしまったような、極めて危険な状態です。
この記事では、労働条件通知書がもらえないという違法事態に直面したあなたが、泣き寝入りせずに自分の権利を守るための、具体的なアクションを解説します。
第1幕:「航空券」がないフライトの危険性
まず、明確に理解してください。労働条件通知書の交付は、労働基準法第15条で定められた会社の法的な義務です。これを怠る会社は、その時点で法律違反を犯しています。
第2幕:「航空券」に記載されるべき必須項目
あなたが請求すべき「航空券」には、以下の項目が必ず記載されていなければなりません。(参考:厚生労働省モデル様式)
- 絶対に書面で明示が必要な事項
- 労働契約の期間
- 就業の場所、従事すべき業務の内容
- 始業・終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、休日、休暇
- 賃金の決定、計算・支払いの方法、締切り・支払いの時期
- 退職に関する事項(解雇の事由を含む)
これらの項目が曖昧なままでは、「言った、言わない」の水掛け論になり、あなたが不利な状況に置かれてしまいます。
第3幕:航空券を要求する!3つのステップ
では、具体的にどう行動すればよいのか。冷静に、しかし断固として、以下のステップを実行してください。
記録に残る形で、明確に要求する
まずは、会社に対して「労働条件通知書をください」と明確に要求します。口頭ではなく、後から証拠として残るメールやビジネスチャットで依頼するのが賢明です。
依頼メール文例
この文面には「労働基準法第15条」という言葉を入れることで、「私は法律を理解した上で、正当な権利を要求しています」という毅然とした意思を示すことができます。
それでももらえないなら、外部の窓口に相談する
正当な要求をしてもなお、会社が交付を拒んだり、はぐらかしたりする場合、一人で戦う必要はありません。あなたの強力な味方となる、公的な相談窓口があります。
- 相談先: 全国の「労働基準監督署」
- 何をするところ? 労働基準法等に基づき、企業への調査や指導を行う行政機関です。匿名での相談も可能で、労働条件通知書が交付されないといった法律違反に対して、会社へ行政指導(是正勧告)を行ってくれる場合があります。(参考:全国労働基準監督署の所在案内)
労働基準監督署に相談したという事実が、会社への強力な圧力となります。
あらゆる「パンフレット」を証拠として保管する
労働条件通知書がない場合、次善の策として、求人票や募集要項のスクリーンショット、面接時のメモ、採用決定時のメールなど、「パンフレット」にあたるものを全て保管しておきましょう。これらは、万が一の際の重要な証拠となります。
終幕:あなたのキャリアは、有効な航空券から始まる
求人票の言葉に胸を躍らせ、新しいキャリアに期待を抱くのは当然のことです。しかし、その旅を安全で確かなものにするためには、法的に有効な「航空券」が不可欠です。
労働条件通知書がもらえないのは、異常な事態です。決して「そういう会社なのかな」と諦めないでください。声を上げ、正当な権利を要求することは、あなた自身の未来を守るための、そして、後に続くかもしれない他の従業員を守るための、勇気ある一歩なのです。