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日本の少子化は単なる社会問題にとどまらず、企業の採用環境に直接的な影響を及ぼしています。若年人口の減少に伴う労働力不足は、採用コストの上昇を招き、多くの企業が採用活動に多大な投資を強いられる状況です。人材確保が困難になる今、企業経営者や人事担当者はどのような対策を講じるべきなのでしょうか。本記事では、少子化の現状と採用コストへの影響を分析し、具体的な対応策を紹介します。
2025年上半期の日本の出生数は33万9280人で、前年同期比3.1%減少し、過去最少を記録しました。年間換算では約66万人が予測されており、国立社会保障・人口問題研究所の悲観シナリオ「出生低位仮定」の値(65.8万人)を下回る可能性もあります。その主な要因としては、有配偶出生率の低下が挙げられます。若年層の人口や婚姻数が横ばいで推移している一方で、結婚している女性が産む子どもの数が減少しているのです。
さらに、15歳未満の子ども人口は2025年5月時点で1361万7千人と前年同月比2.53%減少し、43年連続の減少傾向が続いています。総人口も1億2321万人(前年比0.48%減)まで減少し、労働市場の供給が減少することが明確です。こうした人口構造の変化は、中長期的に企業の採用競争を激化させ、採用コストの上昇を不可避にしています。
少子化と人口減少に伴う採用コストの問題に対して、企業が取り組むべき具体策を以下にまとめました。
優秀な人材を確保するためには、企業の魅力を求職者に伝える採用ブランディングが重要です。採用専任部署を立ち上げ、企業の価値や働きやすさを訴求することで応募者数増加につながります。
働き方改革やテレワークの導入により、育児や介護と両立しやすい環境を整備することが、若年層の出産意欲や定着率向上に寄与します。特に女性の労働参加率向上は、長期的な人材確保戦略として不可欠です。
既存の若年労働力だけに依存せず、高齢者、外国人、障がい者など多様な人材を積極的に採用・活用することで、労働力の幅を広げる必要があります。
採用活動のROI(投資対効果)を正確に把握し、費用対効果の低い媒体や施策を見直します。データ分析を駆使して、最適な採用チャネルの選定を行いコスト効率を高めましょう。
企業が福利厚生の一環として、結婚・出産支援や子育て支援を強化し、社員のライフイベントをサポートすることも、長期的には人材確保に有効です。
ある企業は、2021年から2023年にかけて採用費を2倍以上に増額し、採用専任部署を設置。また採用ブランディング施策を積極的に展開しました。その結果、応募者数と採用者数が過去最多を記録し、採用難を部分的に克服しています。この事例は、人口減少下でも企業の戦略的投資が採用成果に結びつくことを示しています。
日本の少子化は今後も進行し、労働力供給の減少に伴う採用市場の競争激化、採用コストの上昇は避けられない課題です。しかし、企業が戦略的に採用ブランディングや働き方改革、多様な人材活用に取り組むことで、持続可能な人材確保を目指せます。政府や自治体も若年世代の結婚・出産支援に注力する必要があり、企業も積極的に連携していくことが求められています。今こそ、自社の採用戦略を見直し、変化する人材市場に柔軟に対応する第一歩を踏み出しましょう。