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日本企業の中には、人事評価制度が形式的にしか機能せず、社長などトップの恣意的な判断に頼るケースがあります。このような状態は、社員のモチベーション低下や離職率増加に直結することが明らかになっています。特に評価基準が不透明な企業では、優秀な人材の離職率が平均の約2.3倍に増加し、意思決定にかかる時間も平均3.2倍に延びるという統計も報告されています。
実際に、2024年の東京商工リサーチによる企業倒産件数は10,144件にのぼり、多くは「トップへの権力集中と意思決定の属人化」に起因しています。急成長スタートアップにおいても、創業者の主導で評価制度や職能定義が整備されないまま社員が増え、組織混乱や退職者の急増に至るケースが複数報告されています。
SmartHRは評価制度の抜本的な見直しを通じて、この悪循環から脱却した成功例です。
一方、「社長と社員がフラットに仲良し集団となり、境界やルールが曖昧になる」組織文化もまた、長期的には大きなリスクをはらんでいます。研究では、このような仲良し集団型組織では責任の所在が不明瞭となり、難題の解決を避ける傾向が強まるため、生産性や成長率が低下すると報告されています。
また、部門間対立の増加(280%)、社内プロジェクトの成功率急落(32%)などの深刻な組織機能不全のデータが確認されています。
さらに心理的断層(フォールトライン)が形成され、意思決定不能案件が40%以上を占めることも。結果として社内の離職率は年率で50%を超え、売上も毎月5~15%程度減少することさえあります。
ITベンチャーにおける実例では、自由・フラットな文化の維持に固執し30人規模を超えた段階でグループ対立や責任回避が激化。主要メンバー大量離脱を招いたものの、外部投資家の介入後に階層化とルール整備を行うことで回復しています。
Googleの「プロジェクト・アリストテレス」調査でも、高パフォーマンスチームには一定の規律や役割明確化が不可欠と示され、過度なフラット・仲良し文化は逆効果と指摘されています。
SmartHRは急成長期に評価制度やマネジメント体制の未整備から人材流出と組織混乱を経験しましたが、職能定義や評価指標を再設計し透明性を確保。結果として離職率を抑制し、持続成長の道を切り開いています。
また、あるITベンチャーは創業期の「フラットで仲良し」文化を維持した結果、30人を超えた段階で組織分裂が激化し主力メンバーが離脱。外部投資家の支援を受けて階層設計とルール整備を行い、再び成長軌道に乗せることに成功しました。
組織崩壊を招くリスクは、「社長が一手に評価・給与を決める体制」もしくは「仲良し集団化」による属人化・責任回避のいずれか、あるいは両方によって高まります。これらは統計データや事例からも明白で、持続的な成長には明確な評価制度、役割分担、ルール整備が不可欠です。
まずは現状の課題を客観的に見極め、段階的な組織体制の改革を進めることが求められます。優秀人材の流出防止や意思決定の効率化、プロジェクトの成功率向上に直結するため、経営層自ら積極的に取り組むことが成功の鍵となるでしょう。