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現代の若年層にとって、スマートフォンやソーシャルメディアは生活の一部となっています。しかし、その利用が心身の健康に影響を及ぼすリスクも指摘されてきました。特に10代前半の子どもたちの精神的な負担は増加し、多くの国で規制強化の議論が進んでいます。2025年11月、デンマーク政府は15歳未満の子どもによる主要ソーシャルメディアの利用禁止を公式に発表し、国際的にも注目される施策となりました。今回はこの政策の背景や具体的内容、導入に向けた取り組みと課題を詳しく解説します。
デンマーク政府が打ち出した新たな規制では、15歳未満の子どもは原則として主要ソーシャルメディアを利用できません。対象には「スナップチャット」「ユーチューブ」「TikTok」など、子どもたちに人気のプラットフォームが含まれています。例外として、保護者の同意がある場合は13歳以上の子どもに限定的な利用が認められます。
デンマーク競争・消費者庁の調査(2025年2月)によると、国内の子どもたちは1日平均約2時間40分ソーシャルメディアを利用している状況です。これは、精神的負担が懸念される時間帯であることに加え、依存症のリスクを高めていると指摘されています。
デジタル化担当大臣のキャロライン・ステージ氏は、「子どもたちが目にする暴力的なコンテンツや自傷行為に関する情報はリスクが大きい」と述べ、テクノロジー企業の対策不足を批判しています。また、うつ病や不安障害など心理的問題の増加も大きな理由とされています。こうした社会課題を背景に、年齢規制の徹底が求められているのです。
これまでは13歳未満の利用制限が一般的でしたが、デンマークでは15歳未満を原則禁止に設定し、より年齢を引き上げています。これにより未成熟な子どもが受ける影響を抑制する狙いです。
13歳以上の子どもについては、保護者の同意があれば一部プラットフォーム利用が可能とし、家庭ごとの事情を考慮しています。ただし同意の仕組みや管理が今後の課題となります。
政府は規制の抜け穴を防ぐため、厳密な年齢確認を実現するための公的なアプリ開発を進めています。これにより不正な利用防止を図り、強制力の高い運用を目指しています。
Snap(スナップチャット)、Google(ユーチューブ)、ByteDance(TikTok)など、世界的なプラットフォーム運営企業に直接適用される規制となっている点も特徴です。メンタルヘルスへの配慮を企業側にも求める社会的圧力といえます。
2024年からオーストラリアでは16歳未満のソーシャルメディア利用禁止が施行されており、年齢認証技術の導入や違反者への罰則策も検討されています。デンマークと並び、国際的な若年層保護の潮流を形成しています。
議会では過半数の政党がこの規制案に賛成しており、法制化に向けて順調に進んでいます。政治的な支持が強いことは実効性確保に重要な要素です。
デンマーク政府の15歳未満ソーシャルメディア利用禁止政策は、若年層のメンタルヘルス保護を目的に国際的にも注目される動きです。日本を含む各国でも同様の議論が以後活発化する可能性があり、プラットフォーム運営企業や保護者は今後の情報収集と対応準備が求められます。
特にテクノロジー企業は、「年齢確認技術の強化」「児童保護に向けたサービス設計」「利用時間の適正化支援」などの課題に適切に対応しなければなりません。また、保護者や教育関係者もオンラインリスクの理解と子どもとのコミュニケーションを深めることが重要となります。
国際的な規制の潮流を踏まえ、日本社会におけるスマホ・SNS利用の安全管理も再検討の時期に差し掛かっていると言えるでしょう。
※本記事は2025年11月時点の情報に基づいて作成しています。今後の法改正や実施状況にご留意ください。