1000円だけ返済は「時間稼ぎ」?誠意のない相手に”法的措置”を決断すべきタイミング

「返す意思はあります」――その言葉と共に、あなたの口座に振り込まれた「1000円」。

貸したお金が返ってこない日々が続く中で、ほんの少しでも返済があったことに、一瞬だけ安堵したかもしれません。しかし、その安堵はすぐに苛立ちに変わります。翌月も、そのまた翌月も、繰り返されるのは「1000円」だけの返済と、口先だけの謝罪。

これは、相手の精一杯の「誠意」なのでしょうか?
それとも、あなたを精神的に消耗させ、諦めさせるための巧妙な「時間稼ぎ」なのでしょうか?

もしあなたが、このような不毛なやり取りに疲れ果て、「貸した金が返ってこないなら、いっそ法的措置も考えなければ…」と思い始めているなら、この記事はあなたのためのものです。

これは、相手が仕掛けてくる不公平なゲームのルールを暴き、あなたが自分のために試合終了のホイッスルを吹くタイミングを見極めるための、戦略マニュアルです。

この記事のポイント

「ゴールの動くサッカー」- なぜ彼らは1000円だけ返すのか?

あなたが今付き合わされているのは、誠実な返済交渉ではありません。それは、あなたがシュートを打つたびに相手がゴールポストを動かす、「ゴールの動くサッカー」です。そして、「1000円の返済」は、その不公平な試合を永遠に終わらせないための、極めて狡猾な一手なのです。

法的な罠:「時効」をリセットする魔法の1000円

個人間のお金の貸し借りには「消滅時効」があります。原則として「返済期日から10年」または「権利を行使できると知った時から5年」で、あなたがお金を請求する権利は消滅してしまいます。(参考:政府広報オンライン|暮らしに役立つ民法改正

しかし、相手が借金の一部でも返済すると、それは民法上の「承認」にあたり、その時点で時効のカウントがゼロにリセット(法律用語で「時効の更新」と言います)されるのです。(参考:e-Gov法令検索|民法

つまり、相手にとって1000円の返済は、最小のコストで「時効の完成」というゲームオーバーを防ぎ、試合を延々と引き延ばすための合法的な時間稼ぎなのです。彼らはあなたに完済する気などなく、ただあなたが疲れて諦めるのを待っているだけかもしれません。

精神的な消耗:終わらない試合に付き合うリスク

この不毛な試合に付き合い続けることは、百害あって一利なしです。

  • 精神的な消耗: 「今月こそは…」という期待と裏切りの繰り返しは、あなたの心をすり減らします。
  • 時間的損失: 本来あなたが自分の未来のために使うべき時間とエネルギーが、過去のトラブルに奪われ続けます。
  • 回収可能性の低下: 時間が経てば経つほど、相手が転職したり、さらに借金を重ねたりして、財産状況が悪化し、回収がより困難になるリスクが高まります。

国民生活センターに寄せられる相談でも、個人間の金銭トラブルは感情的なもつれから長期化しやすい傾向にあります。(参考:国民生活センター|友人・知人からの借金)あなたは、これ以上この不公平なゲームのプレイヤーでいる必要はありません。

決断の時:審判(法的措置)を呼ぶべき3つのサイン

では、いつホイッスルを吹き、審判を呼ぶべきなのか? これ以上は交渉の余地なしと判断し、法的措置に踏み切るべき具体的なタイミングは、以下の3つのサインが見えたときです。

サイン1:具体的な返済計画を提示しない

本当に返す意思があるなら、いつまでに、月々いくらずつ支払って完済するのか、具体的な計画を示せるはずです。「来月にはまとまったお金が入るから」といった曖昧な言葉を繰り返し、具体的な計画の提示を拒む、あるいは計画を立てても守らない場合、それは誠意がない証拠です。

サイン2:虚偽の説明や言い訳を繰り返す

「ボーナスが出たら」「親から借りられたら」といった言い訳が、ことごとく嘘だったことが判明した場合。あるいは、あなたから連絡しない限り、返済の遅れについて何も言ってこない。このような態度は、あなたとの約束を軽んじている何よりの証拠です。

サイン3:逆ギレしたり、連絡を無視したりする

返済を少し強く求めると、「信じてくれないのか」「こっちも大変なんだ」と逆ギレする。あるいは、電話やメッセージを意図的に無視する時間が増える。これは、対等な話し合いを放棄したと見なすべき危険なサインです。

これらのサインが一つでも当てはまるなら、もう躊躇する必要はありません。
あなたがすべきことは、相手にパスを回すことではなく、審判である「法律」に介入を求めることです。

試合終了へのステップ:具体的な法的措置の種類

貸した金が返ってこない場合、法的措置というと難しく感じるかもしれませんが、個人でも利用しやすい手続きが存在します。

  1. 最終通告【内容証明郵便】
    まず、「これ以上は待てません。法的措置に移行します」という最終通告を、「内容証明郵便」で送りましょう。これは「いつ、誰が、どんな内容の手紙を送ったか」を郵便局が証明してくれるもので、相手に強い心理的プレッシャーを与え、最後の交渉のテーブルにつかせる効果が期待できます。(参考:日本郵便|内容証明
  2. 簡易的な手続き【支払督促】
    相手の住所がわかっている場合、書類審査だけで裁判所から相手に支払いを命じてもらえる「支払督促」という手続きがあります。通常の訴訟より費用が安く、手続きも簡易なのが特徴です。相手が異議申し立てをしなければ、強制執行(差し押さえ)も可能になります。(引用元:裁判所|支払督促
  3. 迅速な解決【少額訴訟】
    貸した金額が60万円以下の場合、「少額訴訟」を利用できます。原則として1回の期日で審理が終わり、その日のうちに判決が下される迅速な手続きです。相手と直接顔を合わせる必要はありますが、スピーディーな解決が望めます。(引用元:裁判所|少額訴訟

どの手続きが最適か、専門家の意見も参考にしながら進めるのが賢明です。(参考:アディーレ法律事務所|貸したお金を返してもらうための7つのステップ

結論:あなたの時間と心の平穏のために、試合を終わらせる勇気を

法的措置は、相手を罰するためのものではありません。それは、あなたが不公平なゲームから降り、奪われたお金と、そして何より大切なあなたの時間と心の平穏を取り戻すための、正当な権利です。

「友人を訴えるなんて…」とためらう気持ちは、痛いほどわかります。しかし、その優しさに付け込み、あなたを消耗させている相手との関係は、もはや健全とは言えません。

一人で悩まないでください。法テラスや、日本弁護士連合会の「ひまわりサーチ」などを利用すれば、あなたの状況に合った専門家を見つけることができます。

今こそ、ホイッスルを吹く時です。
自分のために、試合を終わらせる勇気を持ちましょう。その一歩が、あなたの新しい未来のキックオフになります。

よくある質問 (FAQ)

Q1: 相手に財産がない場合、法的措置をとっても無駄ですか?

A1: たとえ今、相手にめぼしい財産がなくても、法的措置は無駄ではありません。支払督促や訴訟で判決(債務名義)を得ておけば、時効を10年間延長できます。その間に相手が就職して給与を得るようになれば、給与差し押さえといった強制執行が可能になります。将来の回収可能性を繋ぎとめるために、法的手続きは重要です。

Q2: 弁護士に依頼すると費用が高そうで心配です。

A2: 弁護士費用が心配な場合、まずは法テラスの無料法律相談を利用することをお勧めします。収入などの条件を満たせば、費用の立て替え制度も利用できます。また、最近では着手金無料で、回収できた金額の中から報酬を支払う成功報酬型のプランを用意している法律事務所もあります。複数の事務所に相談し、費用体系を確認してみましょう。

Q3: 借用書がないのですが、お金を貸したことを証明できますか?

A3: 借用書がなくても、諦める必要はありません。銀行の振込履歴、お金の返済を催促したメールやLINEのやり取り、相手が借金を認めている会話の録音などが、有力な証拠になり得ます。どのようなものが証拠になるか、弁護士に相談してみましょう。

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