「相談」では会社は動かない!派遣社員がセクハラ対応を義務付ける”魔法の要求”

「派遣先の上司から、プライベートなことをしつこく聞かれる…」
「飲み会で体を触られたけど、波風を立てたくない…」
セクハラ 派遣 相談 誰にすればいいの…?」

その声にならない叫び、一人で抱え込んでいませんか?勇気を振り絞って派遣会社の担当者に「相談」しても、「うーん、大変だね」「もう少し様子を見てみようか」と、曖昧な言葉で流されてしまった経験はありませんか?

それもそのはずです。残念ながら、あなたが単なる「相談」という形で伝えている限り、多くの会社は本気で動きません。

しかし、絶望する必要はありません。この記事は、あなたのその「相談」を、会社が法的に対応せざるを得ない”要求”に変えるための、具体的な武器をお渡しします。

これからお話しするのは、あなたの状況を病気に例えるなら、正確な診断を下すための『カルテ』の作り方と、具体的な治療を法的に義務付ける『処方箋』の書き方です。
もうあなたは、無力な被害者ではありません。自分の尊厳を守るため、冷静に行動する「治療の主導者」となるのです。

なぜ「相談」だけではダメなのか?派遣会社の”本音”と法的”義務”

そもそも、なぜ派遣会社は「相談」だけでは迅速に動いてくれないのでしょうか。そこには、派遣先との関係を悪化させたくないという”本音”が存在します。

しかし、その”本音”よりも遥かに重い“法的義務”が派遣会社には課せられています。

男女雇用機会均等法の第十一条では、事業主(これには派遣元である派遣会社も含まれます)に対し、職場におけるセクシュアルハラスメントを防止し、もし発生した場合には適切に対応するための措置を講じることを明確に義務付けています。(引用元: 男女雇用機会均等法 – e-Gov法令検索)

さらに、厚生労働省の「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」には、派遣会社が「相談窓口をあらかじめ定め、労働者に周知すること」や、「相談に対し、その内容や状況に応じ迅速かつ適切な対応を行うこと」が具体的に定められています。(引用元: 派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針 – 厚生労働省)

つまり、あなたの「相談」を「法律と指針に基づく正式な報告と対応要求」という形に”処方”し直すことで、派遣会社を「対応しなければ法律違反になる」という状況に追い込むことができるのです。これが、我々がこれから手に入れる”魔法”の正体です。

ステップ1:最強の武器『カルテ』を作成する

医師が正確な診断を下すために詳細なカルテが必要なように、あなたが派遣会社や第三者機関に動いてもらうためには、客観的な事実を記録した『カルテ』が不可欠です。感情的に「辛いです」と訴えるだけでは、具体的な対応には繋がりません。

今日から、以下のテンプレートを使って記録を始めてください。スマートフォンやPCのメモ帳、あるいは誰にも見られないノートに、事実を淡々と書き留めていきましょう。

【コピーして使える】セクハラ事実記録シート(カルテ・テンプレート)

--- 事実記録 ---
■発生日時:
(例:2025年9月20日(土) 午後6時30分頃)

■発生場所:
(例:派遣先A社の第一会議室)

■加害者:
(例:派遣先A社 営業部 〇〇部長)

■他の目撃者や同席者:
(例:同僚の△△さん、派遣元B社の営業担当□□さん)

■具体的な言動(何をされたか・言われたか):
(例:「彼氏はいるの?」「今度二人で食事に行こうよ」と執拗に誘われた。断ると「ノリが悪いな」と言われた。会話中、肩や背中を不必要に触られた。)

■あなたの対応:
(例:「そういうのはちょっと…」とやんわり断ったが、聞き入れられなかった。体を触られた際は、すぐに身を引いて距離を取った。)

■その時の気持ち(どう感じたか):
(例:恐怖と屈辱を感じた。仕事に集中できなくなり、翌日会社に行くのが憂鬱になった。)
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記録のポイント

  • 5W1H+1F: 「いつ」「どこで」「誰が」「何を」「なぜ」「どのように」+「どう感じたか(Feeling)」を意識してください。
  • 正確に: 思い込みや推測は書かず、事実だけを記録します。加害者の発言は、可能な限り一言一句正確に。
  • 継続的に: 一度だけでなく、被害に遭うたびに記録を積み重ねることが重要です。これが強力な証拠となります。

この『カルテ』は、あなたの記憶を守り、主張を裏付ける最強の盾となります。

ステップ2:会社を動かす魔法の『処方箋』を突きつける

『カルテ』の準備ができたら、いよいよ派遣会社に『処方箋』を提出します。電話や口頭ではなく、必ずメールなど記録に残る形で行ってください。

以下に、あなたが派遣会社の担当者に送るためのメールテンプレートを用意しました。これは単なる「お願い」ではありません。法的根拠に基づき、会社の義務を果たすよう正式に”要求”する、強力な文書です。

【コピーして使える】派遣会社への”要求”メールテンプレート(処方箋)

件名:【要対応】派遣先でのセクシュアルハラスメントに関するご報告と対応のお願い

株式会社〇〇(派遣会社名)
ご担当 〇〇様

いつもお世話になっております。
貴社より△△株式会社(派遣先名)へ派遣されております、〇〇(あなたの名前)です。

本日は、派遣先におけるセクシュアルハラスメントについてご報告し、貴社に対応を正式に要請したく、ご連絡いたしました。

男女雇用機会均等法第11条、および厚生労働省の「派遣元事業主が講ずべき措置に関する指針」に基づき、派遣元事業主である貴社には、派遣労働者の就業環境を配慮する義務があると承知しております。

つきましては、以下の事実に関し、迅速かつ適切なご対応をお願いいたします。

【発生概要】
・加害者:△△株式会社 〇〇部 〇〇氏
・発生時期:2025年〇月頃から現在まで
・内容の概略:執拗な私的質問、不必要な身体的接触など。(詳細な事実は別途記録しております)

【要求事項】
1. 上記事実関係についての迅速な調査。
2. 加害者からの引き離しなど、私が安全かつ安心して就業できる環境の確保。
3. 再発防止策の具体的なご提示。

上記要請につきまして、貴社としてどのようにご対応いただけるか、大変恐縮ですが【〇月〇日まで】にご回答いただけますよう、お願い申し上げます。

お忙しいところ大変恐縮ですが、本件は私の就業環境と心身の安全に関わる重大な問題ですので、何卒よろしくお願い申し上げます。

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署名
氏名:〇〇 〇〇
社員番号(あれば):
連絡先:
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この処方箋が”魔法”である理由

  • 法的根拠を明記: 「男女雇用機会均等法」という言葉を入れることで、担当者はこれを個人の愚痴ではなく、会社として対応すべき法的な問題だと認識します。
  • 「相談」ではなく「報告と要請」: 文面全体で、あなたが一方的に助けを求めるのではなく、会社に対応義務を果たすよう”要求”している姿勢を明確にしています。
  • 回答期限を設定: 相手に行動を促し、「検討します」で先延ばしにされることを防ぎます。

このメールを送ることは、あなたの権利を主張する力強い剣となります。

もし『処方箋』を出しても派遣会社が動かなかったら?

万が一、この『処方箋』を提出しても派遣会社が誠実に対応しない、あるいは取り合ってくれない場合は、一人で戦う必要はありません。あなたは次のステップに進むだけです。

セクハラ、派遣、相談は誰にすべきか、その答えは社内だけではありません。以下の公的機関は、あなたの強力な味方になってくれます。

  1. 全国の労働局「総合労働相談コーナー」
    職場のトラブルに関するあらゆる相談を、専門の相談員が無料で受け付けてくれます。中立的な立場で、解決に向けた助言をしてくれます。(参考: 総合労働相談コーナーのご案内 – 厚生労働省)
  2. 法テラス(日本司法支援センター)
    どこに相談すれば良いか分からない場合や、法的な手続きが必要になった場合に、解決に役立つ法制度や相談窓口を無料で案内してくれます。(参考: 法テラス公式サイト)

決して一人で抱え込まず、これらの外部の力を借りることをためらわないでください。

まとめ:あなたはもう、無力な被害者ではない

派遣のセクハラ問題で相談すべき相手は誰か――その答えは、まず「記録に残る形での派遣会社」です。しかし、その伝え方は単なる「相談」であってはなりません。

あなたは今日、客観的な事実を記録する『カルテ』と、法的根拠に基づき会社の義務を問う『処方箋』という、具体的で強力な武器を手に入れました。

声を上げることは、決してわがままなことではありません。それは、安全な環境で働くという、労働者として当然の権利を主張する正当な行為です。

この記事が、あなたの尊厳を守り、明日への一歩を踏み出すための勇気となることを、心から願っています。